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思い出のキャバクラ日誌|○○が“本当に強い男”だと確信した夜

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ネオン街の路地で静かに対峙するスーツ姿の男とチンピラ風の男 ライフスタイル
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トントン拍子に出世した私。
1ヶ月程でウェイターのリーダーになり、その翌月には主任になってました。

出世すると、役職手当が付きます。給料が上がるのです。
ただ、それでも20万も無かったかなぁ。

しかし、まぁ、認められるというのは嬉しいものでした。
真面目に働き、『ルールを守る』。その姿を見ていた上司がプッシュしてくれる。

夜の社会は、分かりやすく縦社会でしたが、足の引っ張り合いのような汚い事も無く、ある意味で正々堂々とした綺麗な社会でした。(と言っても他の店や他の世界は知らないのですが)


個性的な上司たちと、楽しい日々

私をプッシュしてくれた上司達も、個性的で面白い人ばっかりでした。

年下だけどマネージャーを任されてる元ホストのイケメンや、夜の世界で何年も勤めてるベテランカタコトの日本語を使うバングラデシュ人元ヤ◯ザだというお爺さん、色んな人がいました。

どの人とも仲良くなり、過酷な業務の中でも冗談を言いながら、楽しく働いていました。

武勇伝を語る、元ヤクザのお爺さん

武勇伝とリアクション芸人

『昭和オトコあるある』なのか、『夜の世界あるある』なのか、ほとんどの人が【武勇伝】を語りたがります。

女性や興味の無い人にとって、この【武勇伝】は、クソつまらない話だと思います。

でも、私は元来人の話を聞くのが得意で、更にお笑いキャッチ技術をマスターしていたので、まるでリアクション芸人、いや太鼓持ち芸人のように、良い反応をしてやれました。

「マジっスか!?」「ヤバいっスね!?」
このワードは何回使った事か…。

上司達は得意気に色々聞かせてくれました。

  • 俺は昔、ボクシングをやってて…
  • 喧嘩で相手のアゴを砕いて…
  • 武器を持ってきた野郎に…
  • 3対1で囲まれたけど…

武勇伝を語ります。
時には同じ話を何回も聞かされる事もあります。

もちろん、初めて聞いた顔でリアクションをしてました。
そら、ガンガン出世もします。

個人の感想ですが、武勇伝を語る大体の人が、話を盛っています。
たまに盛りすぎて、原形が無くなってるような人もいます。

リアクション芸人ではありましたが、実際に話を聞いているのは面白かったので苦痛ではありませんでした。

武勇伝を聞きながら仕事する様子

本当に強い人は語らない

ただ、『本当に強い人』は、語りませんでした

副店長のその人は、身長も小さく強そうには見えず、いつも笑いを取ろうとしてくれたり、でも仕事には熱心で、恐ろしい社長に対しても、真っ直ぐに思いを伝え、部下を庇うような優しい人でした。

ウエダくんに教えてもらった噂では、

  • 昔は田舎の暴走族のヘッドであった」
  • 板前の出身で料理がめっちゃ上手い」

とか教えてもらっていたので、私は実際に副店長に尋ねた事がありました。

「副店長も、昔、結構ワルかったらしいですね?」

すると、

「いやぁ、ちょっとだけな。若気の至りやから」
と答えるだけで、詳しく語りません。

他の人は聞いてなくても、語ってくるのに…。


地上で起きたトラブル

トラブルの一報を聞いて緊張する男

ある日、トラブルがありました。
路上で、店の女の子が絡まれ、それを助けようとした店長(元ホスト)が絡まれている。

目撃した誰かから一報が入ります。

男子スタッフは全員、インカムを使ってやり取りしているので、ホール業務をしていた私の耳にも聞こえてきました。

ガガッ…。え〜、路上でトラブルです。男子スタッフ全員集合!

ホール内でも男子スタッフが動きを止め、目で合図が出されます。
とは言え、店内にお客さんも居るので、全員が出動は不可能。

副店長と私はホール業務を続ける事になりました。

何が起こってるんだろう?と、ドキドキしながら、平然を装いホール業務をしていました。

しかし、数分経っても何の音沙汰も無く、気になり出した頃、副店長に声をかけられます。

「がんもっく、お客さん一組だけやし、ホールは俺一人で何とかするから、お前も行ってきてくれ」

おいおい、マジっスか?
揉め事イヤっスよ。副店長ズルいっスよ。ヒビってんスか?とは言えない。

命令に従う=ルール。
「了解しました」

私も地上へと行く事になりました。


動かない武勇伝たち、動いた副店長

ドキドキしながら、外へ出ると、ウエダくんの姿が見えました。
すぐにウエダくんに状況を聞きます。

どうやら、酔っ払いが店の女の子のキャッチに絡み、それを止めに入った店長が難癖をつけられ絡まれているようです。

「警察呼びますよ」と、震える声で元ホストの店長が応戦していました。

「あ〜ん、何じゃぁー。呼んでみろや、ボケェぃ!」

酔っ払いのチンピラが顔を真っ赤にして絡んでいます。
あー、誰か止めてよー。

私は周りを見渡しました。
すると、数々の武勇伝を語っていた上司達の姿があります。

お、行け!止めろ!
私は武勇伝上司達の行動を見守ります。

ところが、誰一人動きません…。
遠巻きに見守っています。

え?何で?
店長胸ぐら掴まれてますけど。
更にブンブン振り回されて、フラフラさせられてますけど…。

どうなんの、コレ?

ネオン街の路地で静かに対峙するスーツ姿の男とチンピラ風の男

地下から現れた“本物”

そう思っていた時でした。
地下から副店長が飛び出してきました。

そして、サッと店長とチンピラの間に入り、

「やめてください!」
とハッキリ大きな声で言いました。

突然現れた副店長に驚きながらも、チンピラはターゲットを副店長に変え、尚も絡みます。

「何やぁ〜、おまぇ〜!」

今度は副店長の胸ぐらを掴みました
そして、ブンブン振り回そうとします。

ところが…。
誰よりも小さい副店長が、微動だにしないのです。

チンピラが、いくら引っ張り振り回そうとしても、腕を後ろ手に組んだ姿勢のまま、副店長は動きません。

「やめてください。お帰りください」

静かに、しかしハッキリとした声で答えるだけです。

チンピラは、先程までの勢いがなくなり、

「ボケェがぁ、二度とくるか」

と、悪態をつきながらも、そそくさと帰っていきました。


本当に強い人

この人は、ホンモノなんだ…。
私は、本当に強い人を目の当たりにしました。

きっと、仲間の為に体を張ったり、危険な時に助けるような事を、沢山してきたんだ。
だから、全くビビってない。

そして、それを当たり前のようにしてきたから、人に自慢したり、過去の不良時代を他人に話したりしないんだ。

副店長、チビやしヘラヘラしてっけど、めっちゃカッコいいっス!

落ち着きを取り戻した現場では、

「大丈夫か?」
「何や、アイツは。」

と、エセ武勇伝達が虚勢の張り合いをしていました。

貴方達もある意味、大変っスね…。でもキライじゃないっすよ…。


副店長との思い出

その後の色んな出来事でも、副店長の強さは何度も見ました。

売上が悪く、社長の機嫌が悪いミーティングで、ブチ切れた社長がガラスの灰皿を投げつけ、額から流血してても、

「申し訳ありません!本日は必ず達成します!」

と、微動だにしない姿とか…。

何これ、ヤ◯ザ映画やん…。

この副店長には、私が辞める最後まで面倒を見てもらいました。

頼りがいのある、カッコいい人のままでした。

夜の世界を辞めてから、一度もお会い出来ませんでしたが、
どうか元気でおられる事を祈ります。

本当は強い副店長

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