リーダーって、ぶっちゃけ何する人?
ウェイターの1つ上の役職、『リーダー』とは?
主任とかマネージャーって役職名は、何となく管理者って感じがする。でも、リーダーって(笑)小学生みたい。
で、実際に大した事は無かったです。ウェイター達とやる事は同じですが、ほんのちょっとだけ偉そうに指示が出来る。「私は〇〇をするので、あなたは△△をしてください」って感じ。
当時25歳くらいだった私より、2つ3つ年上の人がリーダーでした。他に2人、年上と年下のウェイターがいました。
夜の仕事では、年功序列制度はありません。完全実力主義なので、年下であろうが役職が上の人には敬語を使います。
それこそ若気の至りなんでしょうが、「年下にタメ口なんてきかれたら許せない」という人間でしたが、『ルールはルール』。きっちり守っていました。
大学生だという年下の先輩ウェイターにも、私は敬語で話します。
年下の先輩、ウエダくん
彼の名前は『ウエダ』くん。彼には、業界の事や店の内情なんかを色々教えてもらいました。
ウエダくんは、めっちゃいいヤツでした。敬語で話す私に「敬語をやめてくれ」って言うし、友達のような関係で接してくれました。
彼のおかげで馴染めたと思います。
特に、『キャッチ』という声掛けが、めちゃくちゃ苦手だった私。ウエダくんはキャッチが得意で、やり方も色々教えてくれました。
キャッチが苦手だった私と、笑わせ屋ウエダ
一番嫌だったのは、勇気を出して「1件いかがですか?」と声をかけたのに、無視されること。
汚い物を見るかのように蔑まされ、時には犬を追い払うかのように手で『シッ、シッ』とされます。マジでやめてほしい。人間ですから!
ところが、ウエダくんはそんな事、全く気にしない。即座に次のお客を狙います。
ある時、私はウエダくんに言いました。
私:「無視されたり、追い払われたらヘコむよな」
ウエダ:「そう?別に気にせーへんかったらエエやん。」
私:「ウエダはメンタル強いな」
ウエダ:「そんな事ないで。がんもっくさんは真面目すぎるんちゃう?もっと遊んだらエエねん。」
私:「遊ぶ?遊ぶって言われても…」
ウエダ:「俺は歩いてる人を店に呼び込もうとするんじゃなくて、笑わせようと思ってんねん。」
笑わせる?そんな事考えた事なかった。
観察してみると、ウエダくんは「昨日の〇〇見ました?」とか「今日は誰も店に来てくれへんなぁ。どう思います?」と話しかけたり、酷い時は「ちょっと見て」と言って芸人の一発ギャグをパクって見せたり……。
当然ですが、見ず知らずの通りすがりの人達にやっていたのです。
意外な事に、思わず笑ってしまう人や、ノリのいい人は会話してくれたり、とても楽しそう。
結果として、やっぱり店には寄らず立ち去る人が多いのですが、何回かに1回、2回はそのまま店に来てくれる事もありました。
キャッチとして成り立ってないようで、**成り立っている。**何より、楽しそうでした。
「がんもっくさんも、一緒にやりましょうよ」とウエダくんに誘われ、私も挑戦。
スルーされる事があっても、お互いを笑わせたら勝ち!みたいな感じになっていき、段々とキャッチ成功率も上がっていきました。
おかげで、人前でボケるなんて余裕になりました。

掟破りの金髪バンドマン先輩
他にも、私が新人であるが故に、リーダーに理不尽な仕事を押し付けられていた時も、私を助ける為に裏で動いてくれていたり、先輩として尊敬出来るカッコいい男でした。
後の話ですが、そんな彼が姿を消したのは、驚きと淋しさと、悲しい出来事でした…。
もう一人の先輩ウェイターは、**金髪でバンドマンのような雰囲気の人。**この人も良い人でした。
遅刻ばっかりしていて、ヘラヘラといつも笑ってるし、フニャフニャと開店準備をするのですが、営業時間になるとシャキッと立ち回ります。
その姿は、ボーイとして完璧。
ウェイター達から一目置かれていましたが、専務からは要注意人物扱い。なぜだろう?と思っていたのですが、これについては後になってわかりました。
掟を破っていたのです。しかも、最も大事な掟を。
店の女の子に手を出していたのです。これはアカン。ヤバいッスよ。
一度、専務のスパイによってその事実が発覚してしまいました。
翌日、バンドマン先輩は立派な金髪頭から坊主頭に変わっていました。「へへへ」と、いつも通りヘラヘラしていましたが、ガリガリのバンドマンが坊主頭て。笑いそうになるのを我慢するのが大変です。
それから何日かして、坊主姿に慣れてきた頃、バンドマン先輩は店に来なくなりました。
どうしたのかな?と気にしていたのですが、数日経って事情が分かり始めました。
愛の逃避行と、その結末

バンドマン先輩は、同じ女の子に手を出して、2人で逃げていたそうなんです。
驚いたのは、2人とも真剣交際をしていた事。
「2人が一緒になるには、愛の逃避行しか無い」と思ったんですかね?
「バイト辞めます」って言って2人で辞めれば良かったのに……。
ところが……。
1週間ほどして、バンドマン先輩は見つかったと報告がありました。
正確には、見つけられてしまったとの事です。
やはり、こういう『夜の仕事』というのは、皆さんもご存知かもしれませんが、バックにヤ〇ザのような方達がいらっしゃいます。
私が普通にキャッチしたり、ホール業務をしてる間、血眼になって探していたようで……。
無事(?)に見つかったバンドマン先輩は、お叱りを受けて復帰されました。
少し伸びかけていた髪の毛は、さらに短い坊主頭に。前と違ったのは、片目に大きな眼帯をしていた事。いつものようにヘラヘラ笑うと前歯が無かった事です。……お察しください。
そんな風な【楽しい職場】でしたので、「簡単に辞めます」って言えなかったんだな。
アハハと笑いながら、
(俺は辞めたくなった時はどうすればいいんだろう?)
と、薄明るくなった夜空を見て考えていました。
ウエダくんも…そして今思うこと
最終的に、バンドマン先輩は1ヶ月後くらいには来なくなりました。
そして、私が辞める1ヶ月ほど前には、ウエダくんも辞めてしまいました。
驚いた事に……ウエダくんも女の子に手を出して、逃げました。
みんな、好っきゃねぇ。俺には理解できん。考えられへん。
以上、ウェイター時代の思い出でした。

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